「競争力」の源泉となるのは、提供する価値(提供価値)です。顧客は、提供価値に対して対価を支払い、ビジネスが成立します。その提供価値をどのように理解すればよいかを考えます。
提供価値は、価値創造や付加価値の観点から議論されますが、ここでは、もう少し噛み砕いて、価値がどこから生まれてくるのかを「差異化」と「機能的価値と意味的価値」から説明します。
商品差異化
「差異化」には、商品の差異化(商品差異化)と組織能力の差異化(組織能力差異化)があります(※)。商品差異化には、機能・価値基準・商品分野による差異化に分類できます。
機能による差異化は、パソコンにおいては、CPUの速さやSSDの容量といった数字で比較できるもの(定量的な能力)と考えます。これらは、同一の指標で比較が可能であり、技術の進歩により陳腐化が明確となります。また、比較指標が存在するので模倣も容易と考えられます。
価値基準による差異化とは、MacとVAIOといった、顧客に価値観が基準となるものです。ブランド化に近いと考えてもよいと思います。定量的もしくは客観的な比較指標が明確とは言えないので、優劣をつけがたい場合があります。また、差異化するために、どの点を模倣し超えていけばよいのかが不明確であるとも言えます。
商品分野による差異化とは、既存商品の提供価値を超える新しい商品を開発するということです。例えば、固定電話に対する携帯電話、携帯電話に対するiPhone(スマートフォン)は、新しい商品の提供による差異化です。既存の提供価値に、新しい付加価値を上乗せした商品の提供とも言えるかもしれません。なお、新しい商品を提供するので、当初は模倣することは難しいと考えられます。
このように差異化ポイントには模倣容易性などに違いがあるため、商品を研究開発する際には、何を差異化するかを意識することが重要となります。この模倣容易性などは、研究開発にかけるリソースの大小などの経営判断にも影響を与えます。
商品差異化は、競争力にかかることと説明しましたが、差異化には、組織能力の差異化(組織能力差異化)もあります。これは、コア技術・組織プロセス・事業システムに分類でき、継続的な競争力優位性に繋がります。
以上の差異化を模倣容易性と継続的競争優位性を縦横の2軸にとって配置すると以下のように整理できます。
次回は「機能的価値と意味的価値」について解説します。
参考
- MOT[技術経営]入門、延岡健太郎著、日本経済新聞出版
- 技術経営について考える(3)
以上(2022/2/19)