2025年版中小企業白書・小規模企業白書が公開されました

2025年4月25日、中小企業庁が取りまとめた、「令和6年度中小企業の動向」及び「令和7年度中小企業施策」(中小企業白書)、並びに「令和6年度小規模企業の動向」及び「令和7年度小規模企業施策」(小規模企業白書)が閣議決定され、公開されました。

ポイント(ニュースリリース抜粋・引用)

(1)中小企業・小規模事業者の動向
  • 令和6年度は円安・物価高が継続し、30年ぶりに「金利のある時代」が到来。輸出より輸入比率が高く、借入金依存度も高い中小企業・小規模事業者にとって、これらは利益下押しのリスクとなり得るため、中小企業・小規模事業者が直面する状況は依然として厳しい
  • 2024年の春季労使交渉では、約30年ぶりの賃上げ率を達成したが、大企業との差は拡大。中小企業の労働分配率は既に8割に近いため、更なる賃上げ余力も厳しい状況。一方で、人手不足は依然として深刻な状況にあるため、人材確保のために業績改善を伴わない賃上げも増加
  • 物価、金利、人件費の上昇と、構造的な人手不足に直面し、コストカット戦略は限界。積極的な設備投資・デジタル化と、適切な価格設定・価格転嫁の推進により、付加価値や労働生産性を高める経営に転換していくことが最重要課題
(2)中小企業・小規模事業者の成長・持続的発展に向けて有効な取組

経営者が、自らが置かれている状況と方向性を把握し、的確な対策を打つ力としての「経営力」が重要。本白書では、「経営力」について、以下3つの観点から分析

  1. 個人特性面:異業種・広域ネットワークで他の経営者と交流し、学び直しに取り組む経営者の成長意欲の高さは業績向上に寄与
  2. 戦略策定面:経営計画策定・実行、差別化や市場環境を意識した適切な価格設定を行う戦略的経営は業績向上や賃上げ・投資を促進
  3. 組織人材面:経営理念、業績・経営情報の共有を重視するオープンな経営は業績向上に寄与する。賃上げ、社内コミュニケーション円滑化、働き方・職場環境改善など、従業員を大切にする人材経営は従業員の確保・維持に貢献
  • 中小企業では、売上高規模ごとに異なる「成長の壁」の打破が必要。成長の加速段階では、経営者にないスキルを持つ補完型人材の確保や、経営者の職務権限分散による一人経営体制の克服が重要であり、売上高100億円以上では、拡大する組織を経営者と共に支える経営人材やDX人材の確保が重要。また、企業規模拡大には、積極的なM&Aやイノベーション、海外展開の推進が有効な手段
  • 小規模事業者では、事業規模・商圏が限られる中、差別化による独自の強みの創出が重要。経営計画策定等を通じ、経営者のリテラシーを高め、経営の振り返りと改善のサイクルを通じた「経営の自走化」を目指すことも重要。地域の社会課題解決事業を担うビジネスの推進も期待

補足

  • 動向、経営力と成長戦略、スケールアップ、施策について報告(中小企業白書)
  • データ(主にアンケート調査による現状把握)とまとめ(推測・仮説)、事例紹介で構成
  • 令和7年度施策は、白書で論じている分析の上に策定されているはずなので、自社の状況と照らし合わせて合致する状況については効果的な施策を探す価値がある。
  • 特にスケールアップ(100億円規模企業を目指す)については、中期的な施策であり、継続的な支援が期待できる。

関連資料

以上(2025/5/2)